シリーズ「実践者」に聞く① 「人間力を養う」EQを、社内外に拡げていく -株式会社オーイーシー

会社や組織でどのようにEQが導入・活用されているのか。その実践事例をご紹介する連載のスタートは、大分県に本社をおく株式会社オーイーシーの取り組みです。総務・人事統括部の後藤恵さんと経営戦略部の瀧石良平さんにお話をお聞かせ頂きました。
話し手のご紹介

株式会社オーイーシー
総務・人事統括部
後藤恵さん

株式会社オーイーシー
経営戦略部
瀧石良平さん

Q:まず、お2人のこれまでのご経歴と現在の仕事をお聞かせ頂けますか?
後藤:2005年の入社です。データエントリーという入力業務からキャリアが始まり、その後3年間の営業事務を経て、結婚と2回の出産をしながら、総務・経理・人事の業務を7年続けています。今年度(2022年度)からは社員教育にも関わらせていただいています。
ジャパンラーニングさんとは昨年12月からお付き合いをさせて頂いています。EQについては勉強中ですが「人間力」というところにすごく魅かれています。
(「人間力」に魅かれた理由は)技術は勉強などで身につくものですが「人間力」は生まれてから普段の生活の中で養われていくもの、誰にでも平等に備わっているもの。にもかかわらず、どんな経験をしてきたかによって変わってくるのがすごく面白いなと思っています。私は息子が2人いるのですが、性格がまったく違っているんです。子供を育てる上でも人間力を磨いておけば、社会に出たときに、どんなところでも渡って行けるような気がしています。

瀧石:私は2009年入社です。最初は経理で、今は経営戦略を行う部署で組織の活動などを担当しています。自治体様向けなどのISO規格や個人情報=プライバシーマークを扱うなど、組織を円滑に進める仕事をやっています。
自社の社員教育や、お客様向けの講習、プレゼンテーションなど人前に立つ仕事が多く、先日、EQコーチ研修を初めて受けさせて頂きました。ちゃんと結果がグラフに出て強み弱みや傾向が出るので、上司が見る上でも使いやすいツールと言えるのではないか、と感じています。

Q:御社の人材育成の取り組みの特徴をお話し頂けますか?
後藤:当社では、入社して3ヶ月間の新入社員研修から始まって階層別研修やプログラミングの研修などがあります。人材育成には結構力を入れているのですが、離職が多かったり、若い方の離職もあったりするため、人材育成のありかたを変えていかなければいけない過渡的な状況にあるな、と感じています。

Q:具体的には何を変えて行かなければならないのでしょうか?
後藤:システムづくりのためだけなら技術だけを磨けば良いのですが、社員同士、社員とお客様のコミュニケーションといった部分には結局、人間力が必要になって来ます。なので、これからは人間力という部分もあわせて教育をしていかなければいけないと思っています。

Q:御社で導入された新人事制度についてお話し頂けますか?
後藤:昨年度から導入しました。今までは、等級・職種によってお給料が決まる形でしたが、等級に応じてできることに応じて職種が上がったり、能力が高いので給料も上がったり、といった内容です。いわゆる「ジョブ型」ですね。
全社員一斉導入は難しいので、それまで60歳で退職して1年契約型にしていた社員を今年度ジョブ型に変えて65歳まで正社員として働いて頂くようにしています。また、65歳からも1年更新で「アクティブシニア」という形で能力を活かして働いて頂こうとしています。

瀧石:人事部が、制度を変えたりEQなどの新しい施策を少しずつ取り入れるなど、いろいろと変えていこうと頑張っているところを感じています。会社としては、今後どういうサービスを提供していくかで試行錯誤しています。ジャパンラーニング様と一緒にシステムの開発をやらせて頂いたり、SDGs関係などの取り組みやドローン体験などもやったりしています。
そうした取り組みをする中で、今の世の中、どこも人が足りていないからこそシニアも大事ですし、外部の方々と協業・協力しないとやっていけませんし、社員にも新しい技術を身につけてもらう必要があります。そうした取り組みにおけるEQの価値は、その人がどういうふうにやってみたいのか、何か悩んでいるならこういうことをやってみたらどうかな、という気づきを生む取り組みだと思っています。


Q:これまでEQを、どのような人たちに、どのように導入されて来ましたか?
後藤:4年前に事業部長クラスからスタートしました。毎年、管理職研修というかたちで部次長クラス、グループ長クラス、あるいは次期グループ長になってもらいたい人たちなどの中堅社員向けといったかたちで、年々、下の階層におろしていきました。昨年度からは、新入社員や社内を活発にしていきそうな女性社員をピックアップしての研修も行っています。

Q:上位層からEQをご理解頂くのはよいですね。
後藤:はい。事業部長クラスが受け部次長クラスが受け、最後にはグループ長が受けるときは、部長が研修の締めくくりとして「頑張ってほしい」という激励のコメントをグループ長に向けて出します。上司からそういうお言葉をいただけるのはモチベーションの向上にも繋がると思います。今年度は中堅社員研修をしましたが、グループ長から一言いただくことで「自分を見てくれているんだ」という気持ちになると思うので、すごく大切なことだと感じました。

Q:昨年度から新入社員や女性社員にEQを導入された理由をお教え頂けますか?
後藤:若い社員は、メンタル不調になる割合が多いことが理由として挙げられます。マナーやプログラムなどの研修だけではない、新入社員の間に人間力を磨くことの必要を頭の片隅にでも置きながら仕事をすることは、何も知らない場合とは先々まったく違ってくると思います。女性社員については「社内を活発化させていきましょう」という意図です。男性と女性は考え方の違いがすごくあるため、女性同士でいろいろな意見を自由に出しやすくする機会をつくることはすごく大切だという考えのもと、女性社員に限定してEQを導入をしました。

瀧石:私はこれまでEQの研修を受けたことがありませんでした。導入段階では、上の人たちも「どんなものなのかな」と思いながら研修を受けて来たのではないか、と思います。その上で継続しているのは、EQの導入には価値があると弊社として捉えているのだと思いますし、対象者を広げているのは使った後の活用を見据えてのことだと理解しています。

Q:その「活用」とはどのようなことでしょうか?
瀧石:上司が受けた後に新入社員が受ければ、それをチェックした上での接し方や教育係となる先輩とのマッチングなどの気づきにもなるかもしれません。1-2か月仕事をして改めてEQを見ると発見があるのではないか、その人の個性をつかむ良いきっかけになるのではないか、と思っています。

Q:実際にEQを導入されて、その効果や可能性についてはどう思われますか?
後藤:研修対象の階層をどんどん下げていますが、長いレンジで「こんなに変わった」という定点測定までは出来ていない状態です。やはり継続をしてこそ、その方のいまのメンタルや状態を測ることができるものだと思いますし、その先に大きな可能性が広がって行くと思います。かといって1回やったから意味が無いわけではなくて、自分のいまの状態を数値化できることはすごく良いことです。
私自身、昨年初めて受けさせて頂いて「あ、やっぱりね」という数値が出ていたり「これじゃだめだよね」という気づきも、もし他人から言われたら「この人はどれだけ自分のことをわかっているんだろう?」と思ってしまうところが数字を見ることによって気づかされる部分はすごくありました。

Q:御社は健康経営を謳っていらっしゃってストレスチェックもホームページで表示されているのは素晴らしいですね。
後藤:はい、健康経営の取得に向けては4年前から私が総務部で認定してもらうための書類を頑張って書きました。やはり年1回のストレスチェックや健康診断数値の公開などをして社員の満足度が高まらなければ認定はいただけません。仕事としてやっては来たけれど、一方でいち社員の立場から見たときに「こういうことを実践している会社の方が自分は幸せになれる」と思います。
特に今の若い方たちは、健康経営があるかないかや福利厚生が充実しているかで会社を選びますよね。なので、そういう面を目に見えるようにアピールすることはすごく大事なんだな、と実感しています。

Q:健康経営という素地があるからこそ、EQの効果もより高まりますね。
後藤:はい。ホームページの健康経営のページにEQを入れても良いのではないか、と考えています。
瀧石:このEQの検査と研修をやると結構刺激になる、という話を受けた社員から聞いていました。実際私も診断を受けて自分を見つめ直すきっかけになりました。社員は少しでも、自分に刺激を与えてくれる機会を欲しているんですね。例えばシニアになると研修の機会も減ってきがちななか、期待をしている人も多くいらっしゃると思います。以前は60歳で退職だったものが現在は65歳になり、希望すればもっと働くことができるようになっています。EQによって刺激を受けて「まだまだやれるんじゃないか」と思ってもらえると良いですよね。

Q:これまで受けて来られた方々から「刺激になる」という声が出ているんですね。
後藤:シニアの方々からは「私達に、まだ研修してくれるんだ」という声があったらしいんですね。今まではキャリアを重ねていずれ退職、という考え方だったのかもしれませんが、これからは50歳55歳過ぎても戦力であることは間違いないので、いかにモチベーションを高く持ってパフォーマンスを発揮して頂くか、若い時と同じパフォーマンスをいかに継続して発揮して頂けるかはすごく大切だと思います。若い方たちに技術を継承していって頂きたい、とも思います。
シニア研修は間もなく始まりますが、受けた方々が「OECに勤めててよかったな」と思って退職していただけるような会社にしていきたいなと思います。

Q:改めて「感情に向き合い、理解を高めて行動化する」価値や意義について、どのようにお考えですか?
後藤:私は「感情と向き合い理解を高める」という場合の感情は「自分の感情」しかないと思っていたので、すごく難しく考えていました。しかし、当社の社長から「相手の感情と向き合って、相手を理解する。そして相手に自分を理解してもらってお互いを高め合っていくっていくことが大切だ」という話をしてもらって、向きあうのは自分の感情だけではないのだと気づかされました。
自分の感情に向き合うことも大事ですが、相手のことを知って、自分も知ってもらうことでお互いを高め合うということがすごく必要だと思います。当社の中でも常にポジティブな感情を持って、社内を活性化してハッピーになる取り組みを続けていかなければいけない、と改めて思いました。

Q:御社では「働き方改革」とともに「働きがい改革」を謳われていて、その中にエンゲージメント向上を掲げていらっしゃいますね。会社の感情と社員の感情が一致することの意味があるのかな、とお話を聞いて感じました。
後藤:社長が「働きがい改革」の必要性を強調しています。やはり働きがいがあってこそ、会社に貢献したい、という気持ちも生まれますし「頑張ろう」というモチベーションも高まります。

瀧石:「自分も相手も、いろいろ思うことあるんだ」という率直なところに立ち返る。そして、見えていないところが見えるようになることで、感情に向き合ってお互いを知ることができる、と率直に思うようになります。そう気づかしてもらえるツールとしての価値がEQにはあると思います。
EQを個々人が活用することによって頑張ることができる部分を発見して自らを高めていく。一歩踏み出して始めてみる。まずはそこからではないか、と思います。

Q:瀧石さんは経営に携わられているので可視化することの重要性をご理解されていますね。
瀧石:はい。ただ「見える化」は、それが「意味がある形で見えている」必要があると思います。EQについても理解を高めるように見せることがポイントだと考えています。

Q:お話し頂いて、改めてお感じになったことはありますか?
後藤:EQをもっと広めたいな、という気持ちがあります。社長も「大分にEQをもっと広めたい」と言っています。それを実現するように社内外に広めて行きたいです。

瀧石:私は2日前まではEQについてほとんど知らなかったんですが、思ったよりEQに刺激を受けていたんだな、というのが率直なところです。たった数日間で、EQから大きな刺激を受けて、もっと多くの社員にもやってもらいたい、と思っています。
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