シリーズ「実践者」に聞く② EQを、多様な人財の融合に活かす -株式会社JVCケンウッド-

会社や組織でどのようにEQが導入・活用されているのか。その実践事例をご紹介する本連載。第2回は、先だってオンエアされたNHKスペシャルでも取り上げられた、イノベーションを起こす事業部門における多様な人財の活用にEQを活かした株式会社JVCケンウッドの事例です。同社テレマティックス事業部の中川崇さんにお話をお聞かせ頂きました。
話し手のご紹介

 株式会社JVCケンウッド
 テレマティックス事業部 中川崇さん
Q:まず中川様のご経歴と現在のお仕事についてお話いただけますか?
中川:1990年の4月に日本ビクターに入社しました。営業職を20年近く務めた後、2008年に営業所長になりました。その3年後にイメージング事業部、当時のビデオ業務の国内マーケティングに異動になりました。そして2019年にテレマティクス分野の新規事業立ち上げ部署つまり現在の部署に異動しました。昨年、同部署で管理部長になって1年半たちます。
当事業部の中でも収益の柱になっているのが、通信型ドライブレコーダーの販売で、損保向けのサービスとして9割を占めるほどの非常に大きなビジネスに成長しました。また、ドコモなどのキャリア向けサービスが大体10%という構成になっています。

Q:御社では、どのような人材育成の取り組みをされてらっしゃいますか?
中川:まず、販売部門社員向けの実習、経営陣の基礎や社内規定などの新入社員向け研修、昇格時の階層別研修や、5歳刻みでライフプランニングについて学ぶ年齢別研修があります。その他には、職種別・事業別の職能研修も行っています。 ただ、オンラインになったことで、一方的になり空気感がなかなか伝わらず、研修の効果が少し薄くなっているのが悩みです。

Q:健康経営も結構推進されていらっしゃいますね。
中川:はい。働き方改革ということで、ライフワークバランスをきちんと取りなさいですとか、長期残業はやめましょうとか、従業員の心身の健康作りには気を配っています。

Q:EQをどのような対象に、どのように導入されたのかの経緯をお聞かせいただけますか?
中川:私どもの事業部がスタートして、損保会社の通信型のドライブレコーダーを獲得できました。当初は大体20万台程度を想定していたのですが、想定以上にどんどん増えていき、組織も拡大して圧倒的に人が足らなくなっていきました。そこで外部からの採用も行いました。そのような外部からの人材を受け容れる事例は弊社ではちょっと稀(まれ)で。いろいろな人種がいて、使う言葉一つも全然違うといった具合でなかなかまとまらない状況でした。そのような状況を解消して、更に高いレベルの目標を目指して既存社員と中途社員が融合してシナジー効果を出す、なおかつ既存メンバーのモチベーションを上げなければいけない。その手段のひとつとしてEQの導入が始まりました。

Q:導入当初は、中途採用の方々の離職率も高かったんでしょうか?
中川:はい。まず中途採用で来ている方々と、私のように社会人になってから一貫してビクターで勤めて来たプロパーの社員とは、転職の経験も違いますし価値観も異なります。ですが、せっかく同じチームで一緒にやって来たのに離職によって、また一からスタートするのは効率が悪いし社員に与えるモチベーションの点でも良い影響を与えません。EQによってモチベーションを挙げ、離職を防止する効果は確かにあると感じています。

Q:EQを導入されて、その効果や可能性はどのように感じていらっしゃいますか?
中川:現時点での効果という点では、EQ受検の判定結果についての自己分析と、それに対して改善し行動変化を促す自己完結型になっています。しかし、これはちゃんと向き合って取り組んだ人にしか効果が出ない、とも感じています。しかし、今年度からそれを上長にも見える化して、メンバーのEQ結果を見ることでアドバイスができ、それを日頃のコミュニケーションを図ったりサポートしたりなどできるようになりました。それによって昨年以上の大きな効果を得ることができるのではないか、と思っています。

Q:見える化することによって、課題となっている(プロパーと中途入社社員の)融合シナジーの効果が発揮できるかどうか、これからが勝負になってくるということでしょうか?
中川:はい、そうです。中途採用だけではなく、昨年来、新入社員に近い若手のメンバーが辞める事例もありました。マネージャーはベテランが多いので変化が気づきにくかったのですが、それに対してもこのEQを使って変化を事前に察知できると考えれば、防止できたんじゃないかなと思っています。

Q:若手の方々の離職の原因は、どのようなものだったんでしょうか?
中川:一番感じるところは「構ってもらえない」というところだと思います。今の20代前半の人は自己完結するイメージがあって、業務でも自分の知りたいところだけを質問して「全体的な広い視野では見ない」といった、よくメディアで報道されているようなイメージで接してしまった結果、コミュニケーションが取りづらくなって行きました。やはり「見てあげる。かまってあげる」ことが大事なのかなと思っています。実業務とは別のところで少し夢を語ったり、こんな良いことがあったなどのエピソードを披露したりして、若い社員たちが離職を思いなおす一つのきっかけになれば・・と思っているんです。

Q:中川様が感じられる「感情に向き合って理解を高める意味」についてお話し頂けますか?
中川:はい。やはり自分の心の動きはちゃんと如実に出るな、と考えています。私の経歴の中でも、2011年からのイメージング事業部は最初は良かったのですが、途中からビデオカメラが非常に苦戦し、事業の収益も非常に大きく悪化してモチベーションは出なかったです。2019年に新規事業部に来たのですが、メンバーはいなくて自分で何とかしないと廻っていかないという状況でした。そのような、自分で何でもかんでもするようになって、どんどんモチベーションが上がってポジションもついてきたんです。EQ受講すると、そうした心の動きがスコアに出てきていることを肌で感じることができました。正に「感情に向き合って理解を高める」ということを身をもって経験したわけです。

Q:ご自身の経験からも、本当に納得感があるということですね。
中川:まず「感情に向き合う」という点では、ためて一気に吐き出すというのはよくないなと思います。その都度感じたことはコミュニケーションとして言葉で伝え、相手に納得感があれば理解してもらえると思っていますし実践もしています。また「理解を高める」については、やはりコミュニケーションですから、相手の立場に立って言葉として発することが必要だと思います。ただ、その 根底には「思いやりの気持ち」がないと「感情に向き合って理解を高める」ことはできないと思います。それを意識しながら、普通に会話をしてお互いの理解を高めること一番の早道なのではないでしょうか。

Q:分野長がスローガンとされている「RESPECT&HARMONY」は良い言葉ですね。
中川:はい。このスローガンは正に「感情への理解を高める」というところに近しいのかな、と思っています。 多様な人間がいて、お互いの理解を高めてシナジー効果を最大化できれば、それが組織としては一番良いことですよね。それをスローガンにしている良い言葉だと感じています。

Q:中川さんご自身がEQを知る前にいろんな本を読まれていますね。
中川:2008年に幹部職昇格して初めて部下を持ったのですが、そのときにマネジメントの部分で悩みか、いろいろ学ばなければいけないと思いました。その時に一番納得感があったのが「EQ こころの知能指数」だったんです。当時は1課長で部下はほとんど年上。大所帯の営業所地域内にいって、悩み考えたのがEQと出逢うきっかけになりました。また去年は、部門長になって多彩なメンバーをまとめたり、事業管理部時代が各事業部のまとめ役なのでコミュニケーションが必要だったりします。その点でもEQは私自身にとっても大変役に立っています。

Q:いろいろな本を読まれた中で、特にEQに納得感を持たれた点はどこだったんでしょうか?
中川:自分の心の動きが如実にスコアに出る、という点が目からウロコでした。それがバロメーターになって、他の人のスコアと比較することで自分の心の動きがわかり、その対応の仕方も数値でわかります。


Q:EQ値が高い人を「人たらし」と表現されていますが。
中川:いわゆる「人たらし」ってEQの値が高い人なんだろうな、と勝手に想像していまして。確かに周囲から人気のある人はネガティブなことを言わないしキャラクターも「陽」ですよね。そういう人が周囲をひきつけて組織も強くなるし事業も拡大できる、という連鎖も生まれるんだと思います。

Q:ご存知の方で「この人はEQが高いな」と感じられる方はいらっしゃいますか?
中川:分野長がそれに近いですね。あまり目先の細かいことを気にしないしポイントポイントで「アッ」と思うポジティブな発想やアイデアがあるんです。モチベーションが高いから、いろんなアイデアが浮かんでくるんでしょうね。それがEQの高い人なんだろうなと思います。

Q:最後に、改めてEQというものを御社、それから中川さん個人としてどのように生かしていかれたいでしょうか?
中川:先ほどもお話ししたように、自己完結運用ではなくて組織で使いたいです。見える化することで組織力を高める補完型のツールとして使うことを、今年・来年と進めていきたいと考えています。私個人としては、まずこの本をちゃんともう1回読破することです。仕事のことだけではなくて、家庭のことにも参考になりますね(笑)。

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