EQ COLLEGEコラム34
お金 × 感情
先日、NHKスペシャルでオンエアされた番組名は「エモーション・ジャーニー」。
世界80億人が抱く感情をAIが可視化し、「お金」をトピックとして世界中を取材するという見ごたえのある内容だった。
対照的だったのはネパールとアメリカの事例。
ネパールでは「ネポキッズ(Nepo Kids)」と呼ばれる権力者の子息がSNS上で裕福な暮らしをひけらかしたことから民衆の怒りが爆発。
Z 世代の若者たちによる反乱が起こり、権力者たちの家が焼き討ちになっただけではなく、反乱の象徴となったラッパーが何と首相に当選してしまう!という事態が扱われていた。
しかし、それは当初反乱の声を上げた若者の想定を越えたものだった。
一方、アメリカでは生涯で4度も宝くじを当て32億円を得た女性を追跡。
本人は既に亡くなっていたが、得た巨額のお金を支援を必要とする人々のために、あるいは20人以上の大学進学のために使っていたことが明らかになる。
ここに挙げた事例は、「爆発(制御不能)」と「制御」という感情と向き合う上で知っておくべき2つの側面を表している。

お金ほど感情を刺激し直結するものは無いだろう。
お金には喜怒哀楽というすべての要素が詰まっているし、アメリカの心理学者・マズローが提唱した人間の欲求を構造化した「欲求5段階」のすべての段階(生理的・安全・社会的・承認・自己実現)にも関わって来る。
また、お金と感情は経済格差があるほど振れ幅が大きくなるのは、「エモーション・ジャーニー」のネパールの事例にも見て取れる。
ところが、ある一定の収入になると感情的な状況は異なるのだ。
年収が800万円以上になった場合の幸福度はそれ以上の収入になっても変わりは無くなる、という衝撃的な学説を発表したのは、ノーベル賞を受賞した米プリンストン大学のアンガス・ディートン教授。同様のことは、内閣府が2019年に実施した調査でも実証されている。
生活に対する満足度を0~10点の11段階で質問した結果、年収100万円未満の場合は平均5.01で、年収700万円以上1000万円未満だと6.24と1.23の差になるが、年収1000万円以上2000万円以下になると6.52で、その差は0.28になる。
お金が感情に直結するのは、生活や人生が資本主義という仕組みによって成立して来たからだ。
受け取る報酬の多寡によって、まるでその人の価値が決まってしまうような幻想が生まれてしまった。
しかし、資本主義の限界が言われ始めているいま、お金と感情を切り離す、あるいは適切な距離を取る必要性も増しているのではないだろうか。

