「越境学習」でEQを高める② <チェンジ・メイカー育成プログラム>フィールドワーク報告
初日の朝、受講生はJR高崎駅に集合しバスで上野村へ
村内エリアに入ると一面の紅葉に染まった山々が広がり、バス内から感嘆の声が上がりました。
目的地の、道の駅上野で名物の「いのぶた肉の十石みそ鍋」を堪能し、いよいよフィールドワークへ。
道の駅うえの 群馬県上野村 (michinoeki-ueno.jp)
プログラム開始
最初のプログラムは、上野村役場での黒澤八郎村長との懇談です。同村は、平成の市町村合併を拒否し、自立的な自治を実践していることで全国的にも知られています。その決断をした、村の中興の祖・黒澤丈夫村長の言葉をご紹介頂きながら、八郎村長は「村の自治とはどうあるべきか」、「持続する共生社会としての村づくりとは」についてお話し頂き、受講生からの質問にも率直にお答えくださいました。
(黒澤八郎村長「今取り組む村政」より)地方創生 | 上野村 (uenomura.jp)
懇談後は、村の理念が記されている丈夫村長の銅像の前で記念撮影。 村役場を後にしてのコースは、上野村きのこセンター、上野村森林組合そして上野村木質ペレット工場。 きのこセンターは、1999年(平成11年度)に第3セクターとして開業し「安全・安心・健康」をテーマに栽培される質の高い椎茸がお客様の人気を呼んでいます。「菌床」からニョキニョキと生える椎茸が巨大な棚に並ぶ風景は圧巻のひと言。(上野村きのこセンター)
森林組合では、木材が加工される様子を見学しました。(上野村森林組合)
森林面積が95%を占める村の経済を支え、その品質は大手家具メーカーやオフィス関連企業からも注目されています。様々な木工製品が道の駅で販売されているほか、Iターン者を含む木工家たちの協会が運営する作品は、川の駅内の「クラフトマンショップこかげ」などで買い求めることができます。続いて訪問したのは、2010年(平成22年)度から、低質の木材を有効活用するために建設された上野村木質ペレット工場。ここで製造されるペレットが村内の家庭で使用されるほか、近年では軽井沢などのリゾート地にも流通され始めています。(木質ペレット)
実は、この3つの施設は「上野村型循環型社会」をささえる重要なインフラ。森林組合によって伐採される木材の一部がペレット工場で製品化され、きのこセンター内の木質バイオマス発電に活かされているのです。(木質バイオマス発電工場)
こうした取り組みを通じて、上野村は環境省が選定する「脱炭素先行地域」に選定されています。脱炭素先行地域 – 脱炭素地域づくり支援サイト|環境省 (env.go.jp) 日も暮れかけた頃に向かったのが、「子育て」ならぬ「子育ち」を推進する村の代表的な取り組み「かじかの里学園」。1992年(平成4年)にスタートした事業で、毎年10数名の村外(主に都市部)の子供たちが1年間、上野村に「インターン」する取り組みです。(かじかの里学園)
かじかの里学園とは – 山のふるさと合宿 かじかの里学園 (kajikanosato.jp)
学園では、村上和嗣学園長によるご説明を頂いたあと、園内を見学しました。料理はすべて自炊、学び方や遊び方も、自分たちで考えなければいけない環境の中で、いつしか子供たちは「自分の意見を言うことができ、自分のことを自分でできるようになります」と村上さんはお話しくださいました。そのお話を聞いたママさん受講生からは「うちの子供たちにも体験させたい!」という声が一斉に上がりました。 初日の最後のメニューは、受講生と村の皆さん混成によるリフレクション(内省)のワークショップ。八郎村長もご参加くださいました。村の皆さんに話したいテーマで自由に語って頂き、それに対して受講生が問いかけを行います。ワークショップの1時間を終えた時、すこしぎこちなかった村の方たちと受講生の距離も縮まり、双方から「自分が知らなかった視点をもらった」という声が聞こえて来ました。(リフレクションワークショップの様子)
ワークでお互いの関係が温まった後は、バーベキュー大会を開催。村の特産品である、イノブタや野菜を食しながら、夜遅くまで語らいが続きました。 受講生が宿泊したのは、上野村自然体験学習の家「木森れ陽」。村の豊かな自然を活用した森林セラピーなどの自然体験や環境学習の拠点となっています。(上野村体験学習の家「木森れ陽」)
上野村自然体験学習の家「木森れ陽」 | 上野村 (uenomura.jp)
翌朝は、木森れ陽の目の前にある「しおじの湯」内の食堂で朝食を取り、2日目のプログラムに出発!(しおじの湯)
2日目のプログラムに出発!
最初に向かったのは「慰霊の園」。1985年(昭和60年)8月12日に起こった航空機史上最大規模の墜落事故は、この村にある御巣鷹の尾根で起こりました。図らずも、この事故によって全国的に名前を知られることになった上野村ですが、黒澤丈夫村長(当時)のリーダーシップのもと、事故から1年後には慰霊碑が建てられ、事故の記録を残す資料館が、現在も財団法人慰霊の園(上野村と日本航空出資の公益財団法人)によって運営されています。事故の現場に向かって手を合わせるカタチで造形されたモニュメントの前で、受講生一同は犠牲者への追悼の祈りを捧げました。
(慰霊の園内の「慰霊塔」)
続いて向かったのは、村最大の観光名所「天空回廊エリア」。関東最大級の鍾乳洞「不二洞」をめぐる体験をした後は、長さ225メートル、高さ90メートルの巨大な吊り橋「上野スカイブリッジ」を体験。在宅ワークで運動不足になっている受講生は青息吐息。思わぬ形で運動不足を痛感することになりました。(不二洞)
(「まほーばの森」内のグランピング施設)
【公式】旅する上野村 (uenomura-tabi.com)
360度に広がる雄大な渓谷を眺めながら、少し恐々(こわごわ)橋を渡った先にあるのが、山小屋風コテージや、グランピング施設などが揃う宿泊体験エリア「まほーばの森」。「次は家族同士や友人同士で来たい!」という声が上がります。(上野村スカイブリッジ)
午前のプログラムの最後は、上野村随一の宿泊施設・ヴィラせせらぎを訪問。(ヴィラせせらぎ)
天然温泉と地元の食材を活かした料理で、旅行サイトなどでも高い評価を獲得しています。しかし、そこに至るまでの苦労は大変なものだったことを吉田徳治総括支配人がお話しくださいました。自然災害やコロナ禍の影響によって客足が減少するなか、顧客データを徹底的に分析。癒しを求めるターゲット層に定め、リピーターのお客様には前回と違うメニューを工夫するなどのきめ細かい対応に切り替えた結果、「年に10回以上も滞在くださるお客様がいらっしゃいます」(吉田さん)というほどの、上野村どころか関東随一の愛される宿になっています。 プログラムの最後は、2日間のフィールドワークを踏まえてのグループディスカッションを行いました。「魅力あふれる村づくり(サステナブルツーリズム)」「自律した循環型の村づくり(サステナブルビジネス)」「住み続けたい村づくり(サステナブルライフスタイル)」の3つのテーマに沿ったチームで、提案の方向性を議論しました。ディスカッション後の共有タイムでは、受講生の多くから「事前に立てた仮説が、実際に現地でのフィールドワークによって間違っていることを実感した」「地元の皆さんとの対話を通じて、新たな視点を得た」という声が出ました。(グループワークの様子)
2日間の「弾丸フィールドワーク」を完走した受講生は、それぞれの家路へ。12月16日に行われる発表会に向け、お互いの切磋琢磨が続きます。
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