EQ COLLEGEコラム③
組織×感情
「組織感情」とは何か
「組織」とは“感情の動物”と言われる人間の集合体だ。だから組織には、さまざまな感情が蠢(うごめ)き、それは「組織感情」と言われる。
評価や採用に影響を及ぼす感情の力
たとえば、最も感情を排さなければいけない評価や採用の場面でも、人間が持っている感情が左右する。例えば「ハロー効果」と言って、評価対象者の持つ一部の特徴に引きずられて全体を見失ってしまう事象。出身大学によって採用が有利に働くのが代表的な事例だ。
あるいは「近接効果」とは、直近の出来事に引っ張られて評価のメガネが曇ってしまうことを意味する。評価会議の直前に大きな成果を挙げると、評価が実際以上にアップしてしまうような事例だ。
「空気を読む」文化とオンライン化の変革
これまでの日本の職場では、指示や指導を受ける側が、こうした「組織感情」あるいは「空気」を読むことが美徳とされて来た。しかし、新型コロナに伴うオンライン型就業の普及によって状況は一変した。オンライン空間では、空気や感情を読む必要が無くなったからだ。
逆に、オンライン空間の中でメンバーや部下の感情・状態を読み取る能力があるか否かによって、マネジメント能力の格差が生まれている。
一方、職場にはさまざまな多様性が急速に生まれている。どの企業もグローバル化やデジタル化に対応した新規事業を開拓するためのスキルの獲得に必死になっている。
これまでは、スキル獲得の手法は2つだった。ひとつは、自社社員にスキルを身に付けさせる、いわゆる「リスキリング」。もうひとつは社外からのタレントの獲得。
しかし、どちらも一長一短がある。前者は時間がかかり、後者は自社の文化にフィットするかどうかが未知数だ。そこで最近、注目を集めているのが“第3の選択”と言えるカムバック採用、つまりいったん自社を卒業した社員の再獲得だ。必要とするスキルを持つと同時に、自社の「組織感情」を熟知した人財ということになる。
新しい「組織のカタチ」と共創の未来
あるいは、そもそも「組織のカタチ」が今後、変容していく兆しが見られる。もはやひとつの組織や企業単体では、この不透明な時代でイノベーションを起こすことは困難だ。
異業種同士、あるいは企業、行政といったセクターを越えた共創のニーズが急速に高まっている。 それは同時に、組織感情の多様化や複雑化にもつながる。
オンライン空間の中で、もはや感情を読み取る必要は無くなっていくのか。あるいは、より多様化・複雑化する組織の感情を読み取ることがイノベーションに繋がるのか・・。
まだ、誰もその正解を知らない。しかし、見えない感情というものを可視化することによって、多様性が広がる職場や組織における対話や合意形成の道筋が生まれることは確かだ。