EQ COLLEGEコラム④
スキル×感情

「リスキリング(学び直し)」が(言葉を選ばずに言えば)“大流行”だ。
世界経済フォーラム(ダボス会議)では、2018年から3年連続で「リスキル革命(Reskilling Revolution)」という名のセッションが行われ「2030年までに全世界10億人をリスキリングする」と巣宣言され、日本では2022年には「ユーキャン新語・流行語大賞」にノミネートされた。 その背景には、第4次産業革命に伴うIoT、ビッグデータあるいはAIといったDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する人材がいないという企業の危機感が背景にある。

日本はこれまで、日本人が育てるべき能力やスキルを各省庁が提唱・推進して来た歴史がある。まず「社会人基礎力」は、経済産業省が2006年に発表し、人生100年時代に対応して2017年にアップデートした。

出典:経済産業省 社会人基礎力
https://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/index.html

また、文部科学省は2020年度から順次、小学校、中学校、高校にSTEAM(科学、技術、工学、芸術、数学)教育を導入している。

出典:文部科学省 STEAM教育等の教科等横断的な学習の推進について
https://www.mext.go.jp/content/20240401-mxt_kyouiku01-000016477.pdf

そしていま、リスキリングの旗振り役は厚生労働省だ。
だが、我々が直面する「VUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)」と言われる環境変化、いわば「正解のない時代」で学び直すべきスキルがDXといった目先の仕事に役立つハードスキルに特化してしまっていることの危さも感じる。なぜならテクノロジーと競うことになり、陳腐化も早いからだ。そこに「正解を求めたがる」日本人の学習特性が加わると、その危険性も増大する。

むしろ、人と人とのコミュニケーション能力に代表される「ソフトスキル」こそ、
これから求められる(現に、そうした問題意識が広がりつつある)。
中でも、自らを知り、問いを立てる能力こそが日本人には必要ではないだろうか。

EQの概念を提唱したエール大学のピーター・サロベイ博士とニューハンプシャー大学のジョン・メイヤー博士は「EQはスキル」と言った。どのようなスキルを身に付けるとしても、その基盤となるのが、自分の感情を知ることになる。

感情を知り、時代を生き抜く力

意図的に他者や周囲の感情をかき乱す人間が世界最大の国のリーダーに再選されたかと思えば、ある国のリーダーは真夜中に感情のおもむくままに突発的とも言える行動に出た。
「正解のない時代」はいま、人も自然環境も「正気を失った時代」になろうとしているかのようだ。リーダーに限らず、すべての人が自分の感情をコントロールして正気を取り戻す必要性が増している。

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ジャパンラーニング執行役員 キャリアコーチ教育担当 酒井 章
1984年、電通入社。 クリエイティブ部門、営業部門を経て、2004年からのアジア統括会社(シンガポール)赴任時にアジアネットワークの企業内大学を設立。 帰任後は人事部門でキャリア施策開発に携わる一方、東京汐留エリアの企業・行政越境コンソーシアムを立ち上げる。 2019年4月に独立し、(株)クリエイティブ・ジャーニー設立。アルムナイ研究所をはじめ、さまざまな“越境”の取り組みに携わっている。
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