EQ COLLEGEコラム19
OBN(オールド・ボーイズ・ネットワーク)×感情

この夏、思わぬカタチで話題になったのは高校野球チームの、夏の甲子園大会(全国高校野球選手権大会)への出場辞退だった。思わぬカタチで、と書いたのは、辞退の原因となった野球部内でのいじめ被害者の両親がSNSで発信し炎上、それを受けて高野連(日本高等学校野球連盟)が声明を発表、文部科学大臣もコメントし、大会途中で辞退。とまたたく間に事態が拡大して行ったからだ。
だが「思わぬカタチで」という表現はふさわしくないかもしれない。出来事が起こった初動で、学校や高野連に被害者の感情に対する想像力があれば、そして想像力を欠いた対処をすればまたたく間に誹謗中傷が拡散するという理解があれば、被害者だけではなく1回戦で戦った相手校など、多くの人たちを傷つけることにはならなかったからだ。
「オールド・ボーイズ・ネットワーク(OBN)」という言葉がある。特定の学校や組織で築かれた男性中心の人脈によるネットワークのことだ。元々は、イギリスの名門パブリックスクールやアメリカのアイビーリーグから発祥したと言われているが、現在では上層部が男性で固められた政府や企業が持つ閉鎖的・排他的な風土や文化の代名詞的に使われ、2022年の「新語・流行語大賞」にもノミネートされた。
その特徴は、弱者や外部(社会)の感情に対する想像力を欠いていることだ。
野球チームで起こったこと自体は決して許されることではないが、同時に出来事に対する学校、高野連といった組織の対応や発言には、OBN的病巣が端的に表れた事例だと考えることができる。そして組織側が見誤ったのは、かつては内内で「なあなあ」で収束したはずの出来事がSNSによってオープンになり、あっと言う間に予想もつかない拡大をしてしまったことだ。

SNSによって、「社会感情」の在り方もガラリと変わってしまった。
OBN的な想像力の欠如は、野球部の例だけではなく、参議院選挙後の政権与党のから騒ぎにも見られる。選挙前からわかりきっていた結果を、リーダーを引きずり下ろして自分がのし上がろうとする大の男たち(とマッチョ化した女性議員)の振る舞いの視界には、日々の生活をなんとかしなければいけない国民の姿など入っていないようだ。
さて、このOBN現象。
あなたが属する会社や組織には「ない」と言い切れるだろうか?