EQ COLLEGEコラム27
今年 × 感情

今年も12月22日の「漢字の日」に京都・清水寺で“今年の漢字”が発表された。

今年の第1位は『熊』、第2位は『米』、そして第3位は『高』だった。

確かに今年の後半は、熊のニュースを見ない日は無かった。「令和の米騒動」と言われ、物価「高」が生活を圧迫した。
いずれも、納得の結果だろう。
ちなみに、動物が第1位に選ばれたのは、阪神タイガースが18年ぶりのリーグ優勝を果たした2003年以来、2回目だ。

この取り組みは、日本漢字能力検定協会が主催する形で1995年以来、続いている。
その記念すべき第1回の第1位は『震』。阪神・淡路大震災が起こり、地下鉄サリン事件に「震」撼した年だった。

これまで複数回、第1位に選ばれている字は4つある。『戦』『災』『税』は、それぞれ2回。
『戦』は、米国同時多発テロが起こった2001年と、ロシアによるウクライナ侵攻が起こった2022年。『災』は、大型台風や新潟中越地震が起こった2004年と各地で大型地震や台風が吹き荒れた2018年。『税』は、いずれも増税があった2014年と2023年。

だが、何と5回(2000年、2012年、2016年、2021年、2024年)も第1位に選出されているのが『金』という漢字だった。
いずれもオリンピック/パラリンピックが開催され「金」メダルラッシュに沸いた年だ。
一方で、金融破綻(2000年)、年金資産運用詐欺や生活保護費の不正受給(2012年)、政治の金の問題(2016年)、コロナ給付金(2021年)、政治裏金問題(2024年)という影の側面もある。
『金』が2012年以来、14回中4回も選出されているのは、年々高まる国民の不安や不満を反映しているのかもしれない。

だが、不穏な字ばかりではない。
『愛』(2005年)、『新』(2009年)、『絆』(2011年)、『輪』(2013年)など、希望を託すような言葉が選ばれてもいる。

このように見てくると、その一文字に、その時々の人びとの不安と希望という2つの感情が混在している。何が、私たちの感情に影響を与えているのかが、よくわかる。

ユングの「集合的無意識」ならぬ「集合的意識」とでも呼べるだろうか。

さて、あなたにとって、今年はどのような年だっただろうか?
今年の漢字に何を選ぶだろうか?

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ジャパンラーニング執行役員 キャリアコーチ教育担当 酒井 章
1984年、電通入社。 クリエイティブ部門、営業部門を経て、2004年からのアジア統括会社(シンガポール)赴任時にアジアネットワークの企業内大学を設立。 帰任後は人事部門でキャリア施策開発に携わる一方、東京汐留エリアの企業・行政越境コンソーシアムを立ち上げる。 2019年4月に独立し、(株)クリエイティブ・ジャーニー設立。アルムナイ研究所をはじめ、さまざまな“越境”の取り組みに携わっている。
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