EQ COLLEGEコラム28
箱根駅伝 × 感情

今年も、お正月は箱根駅伝の中継にくぎ付けになってしまった。
往路での大逆転劇、復路のシード権争いなど、手に汗を握る展開の連続だった。

箱根駅伝には、喜び、苦しみ、悔しさ……さまざまな感情が混ざり合っている

出場する選手たちはもとより、観る側もテレビの画面を通じて選手たちの心の中で起こっているものに感情移入する。
スタート直後の、まだダンゴ状態の時の駆け引き、「手をつきたくなる」とまで称される2区の急坂を駆け上がる時の想い、「箱根を制するものは駅伝を制する」と言われる5区の箱根の山登りでのデッドヒート……。

復路にもドラマがある。トップから20分以上離された時点で襷(たすき)が繋がれなくなるのだ。
区間毎にトップとの時間差が表示されるたびに「どうか、次の区でも襷が繋がれますように」と祈るような気持ちになる。
毎回1〜2校の襷が繋がれない9区はゴールまでの数百メートルが直線となっているために、走って来るランナーと、ゴールを待たずに出走させられる次のランナーが同時に画面に映り、非情な現実を見せつけられる。

今年は、5区でトップの選手を追い抜いた青山学院大学のランナーが相手校ランナーの監督者に向けてガッツポーズをしたことが論議を呼んだ。
いわゆる“ゾーン”に入っていたのだから、と理解を示す意見もあれば、スポーツマンである以上、感情を律するべきだという批判の声もあった。

なぜ箱根駅伝は、これほどの「国民的行事」になったのだろう。

駅伝は日本独自の競技だが、その発祥は飛鳥・奈良時代にさかのぼる。「駅制」という、使者が馬を乗り換えて情報を伝達する仕組みが名称の由来となっている。近代になって競技として確立された。
中でも1920年(大正5年)に誕生した箱根駅伝は、山登りというクライマックスのあるストーリー性、お正月開催というタイミングの設定加えて一大イベントに仕立て上げたメディアの効果などによってずば抜けた存在感を示している。

だが、その根底には、箱根を始めとする駅伝を愛する日本人のメンタリティが影響していると言われる。

襷を繋いでゴールを目指す。

その姿が「みんなのために」献身的に尽くす日本人の感情を揺さぶるのだとされる。

「早く行きたければ一人で行け。遠くに行きたければみんなで行け」という言葉がある。

一人で217.1kmもの、険しい山登りのある場所まで到達するのは困難だ。
だが、仲間と一緒なら可能になる。

駅伝は、日本人ならではの人生観や感情の在り方を揺さぶるさまざまな要素が詰まっているのだ。

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ジャパンラーニング執行役員 キャリアコーチ教育担当 酒井 章
1984年、電通入社。 クリエイティブ部門、営業部門を経て、2004年からのアジア統括会社(シンガポール)赴任時にアジアネットワークの企業内大学を設立。 帰任後は人事部門でキャリア施策開発に携わる一方、東京汐留エリアの企業・行政越境コンソーシアムを立ち上げる。 2019年4月に独立し、(株)クリエイティブ・ジャーニー設立。アルムナイ研究所をはじめ、さまざまな“越境”の取り組みに携わっている。
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