EQ COLLEGEコラム29
駅弁 × 感情

皆さんは、最近「駅弁」を食べた経験があるだろうか?
先だって、あるデパートで駅弁大会が開催されているので、興味本位に足を運んだが、驚くほどの盛況だった。5階の会場への列が1階から続いているのだ。

なぜ、これほどの人気があるのだろうか?

ひと言で言えば「ワクワク」という感情を湧き上がらせるからだろう。
では、その「ワクワク」はどのような要素によって構成されているのだろうか?

それは「食」と「旅」と「記憶・郷愁」が絶妙にブレンドされた「非日常感」なのではないか、と思う。

旅は、それが仕事のための出張であっても非日常なものだ。
その気分をさらに盛り上げるための小道具が駅弁ということになる。
そして、興奮した気分を充足させてくれる駅弁の味は、どれも「こってり」としている。
はっきり言って体に良くない。食べ続けると確実にコレステロールがたまりそうだ。

そして、人がデパートで長時間並んででも食べたいのは、楽しかった旅の記憶を再生させたいからだろう。
私の場合、駅弁と言われて想起するのは「峠の釜めし」だ。
子供の頃、親に連れられて信州に旅行した時、信越本線の中で食べた「峠の釜めし」は、たまらなく美味しかった。
横川駅に停車すると、列車の窓を開けて立ち売りをしている売り子さんに声をかけ、買い求める。そして、列車が発車すると共にワクワクしながら包装を開ける。
だから、今でも列車が発車すると共に駅弁の包装を開封する癖がついてしまった。

駅弁の起源には諸説あるが、1885年(明治18年)7月16日に日本鉄道(現在のJR東日本)の嘱託を受けた旅館「白木屋」が宇都宮駅で始めたのが最初の事例だとされ、その日は「駅弁の日」とされている。

だが、列車の高速化による目的地への移動時間の短縮、コンビニやキオスクなどの安価な食事類の浸透、「駅呼応内の飲食店(駅ナカ)」の充実といった環境変化によって、業者の撤退・廃業も相次いでいるという。

その状況を打開する策としてのデパートなどでの「駅弁大会」の開催が増加しているようだ。

私が訪れた会場では、かつての人気駅弁の「復刻版」や「ローカル線応援駅弁」あるいは人気の駅弁のミニサイズを組み合わせることができる「My駅弁」といった工夫が凝らされていた。

なぜ、これほどまでに駅弁は人気があるのか?

非日常感の根底にあるものを探ると、そこには過度に情報が溢れスピード化してしまった社会に疲れてしまった現代人の感情があるのではないか、ということに思い至った。

目的地に急ぐことなく、列車は停車すると車窓を開けると売り子さんが笑顔でやって来る。
発車する「ガタン!」という音と共にワクワクしながらお弁当のふたを開ける。

美味しいお弁当を味わいながら、旅そのものを楽しんでいる自分の気分や感情も楽しむ。

そんな余裕を、いま社会全体が求めているのではないだろうか。

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ジャパンラーニング執行役員 キャリアコーチ教育担当 酒井 章
1984年、電通入社。 クリエイティブ部門、営業部門を経て、2004年からのアジア統括会社(シンガポール)赴任時にアジアネットワークの企業内大学を設立。 帰任後は人事部門でキャリア施策開発に携わる一方、東京汐留エリアの企業・行政越境コンソーシアムを立ち上げる。 2019年4月に独立し、(株)クリエイティブ・ジャーニー設立。アルムナイ研究所をはじめ、さまざまな“越境”の取り組みに携わっている。
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