「人と組織による実践経営学」出版記念・経営とEQの関係性

深く感じる力、深く考える力が、どのようなメカニズムで経営判断やイノベーションに繋がるのか?「人と組織による実践経営学」を最近出版した、弊社講師の貴志俊法のインタビューを掲載します。経営とEQとの深い関係、今後担当する講義についてお話いたします。
話し手のご紹介

 ジャパンラーニング株式会社
 講師 貴志 俊法(きし としのり)
Q: まずはご経歴を教えて下さい。
貴志:もともとは研究者でした。5名の組織でDVDを開発しましたが、新しい事業として、研究者としてアメリカに行き、ゼロから工場を建てました。はじめは20名の組織でしたが、4年で1500名の規模に拡大し、地域はアメリカ、メキシコ、アイルランドと広がりました。この多様性が私の経営の原体験です。その後日本に戻り、数十名、数百名、数千名という規模の、BtoC、BtoB事業領域で、デバイス、ハードウェア、システムと様々な事業の経営を担ってきました。

Q: 「人と組織による実践経営学」出版のきっかけをお聞かせください。
貴志:その経営経験の中で、規模、領域、商品によらず、共通の要素があることが分かってきました。1つ目は足元の経営でいかに適切な決断を行うか。2つ目は中期的にいかに新しい価値(イノベーション)を生み出すか。そして3つ目が、変化が激しく先の見通せない中でこれらをどう実践するのか。
当然これらは私1人だけで行うものでなく、イノベーションを生み出せる人を増やし、それを支援する組織を作ることが重要だと。そのために人材育成、組織開発、組織を引っ張るリーダー開発を行ってきたのですが、色々な場面で講義した内容、実践した内容について、1つにまとめておこうと考えたのがきっかけです。

著書はこちらから→『人と組織による実践経営学』

Q: どういう人材や組織を目標にしていらっしゃったのですか?
貴志:一言で言うと、イノベーションを起こせる人材、組織です。ただ私の課題感は、世の中には戦略理論は数多くあって、これらは様々な経営現場をケーススタディすることで、共通の要素を見つけて帰納的に公式化、体系化されたものだと言えます。経営者や、その候補者は、その公式を覚えて、実際の経営をその公式に当てはめてゆく。これが従来の学習方法ではないかと思います。ただ現実の経営では、ピタっと公式に当てはまるような状況はほとんどありませんし、逆にどの理論が重要なのかが見えにくい。
そうではなくて、経営やイノベーション創出のメカニズムを学び、本質を腹落ちさせることで、自ら感じ、考え、閃く人材を育てたいなと。これを目標に取り組んできました。振り返った時に、あの戦略理論と同じだ、みたいな感じですね。

Q: 本の具体的な内容を教えてください。
貴志:経営において、いかに正しい判断を行うか?イノベーションを生み出すか?持続的に成長するという意味において、この2つは必須要件です。一方で、そのために昨今、人的資本経営とか、多様性・DEIが重要と言われますが、なぜ?については結構曖昧なままで進められていることも多いと思います。本書では、それらがなぜ重要なのか?どう経営に結びつくのか?を腹落ちするための原理原則を示すことを目的としています。具体的には、経営の原理原則やメカニズムを解明することで、
①それらのなぜに答えること、
②経営理論の重みづけ、有効な理論ってどれ?
③それをどのように実践するのか?
これらをできる限りロジカルに、かつ腹落ち感を持って実践に展開できることを目標に書いたつもりです。


Q:そのメカニズムの部分をもう少しお聞かせください。
貴志:まず人間が判断したり、閃いたりするのは、脳で行います。その脳に蓄積されている情報は、目や耳や運動感覚など、感覚器官からインプットされたものです。と言うより、感覚器官からしか情報は入手できないです。本書では、その感覚器官をいかに鍛えるのか?様々な外部刺激を受けながらいかに閃くのか?そしてその深く感じる力、深く考える力が、どのようなメカニズムで経営判断やイノベーションに繋がるのか?人が感じるという基本的な機能から始めて、組織経営という総合的な話に展開しています。

Q:ありがとうございます。話は変わりますが、弊社に参画された経緯とEQとの出会いを教えていただけますか?
貴志:EQという言葉は知っていましたが、パナソニックでの最後の1年間は人事で人材開発体系の設計をする中で、あらためてEQについて触れることになりました。EQとは、自分を理解する能力、他人を理解する能力、より良い行動を取れるための、「考え方、意思」を持って、実際に行動できる能力。のことを言いますが、まず感じたのは、これは孫子の兵法でいうところの「彼を知り、己を知れば百戦危うからず」という話と同じだなと。当然戦うだけでなく、協調するというチームワークも含まれています。
これって私の考えてきた、人と組織による経営と非常に親和性が高いなと。とても共感したわけです。調べてゆくと、私だけではなく、著名な経営者の諸先輩方、例えばソニー元社長の平井さんや日本電産の永森さんもEQに言及されていますし、またATDという世界最大の人材育成会議でも再注目されていることが分かりました。

Q:今後、ご担当される講座はどのような内容になりますか?
貴志:現在はまず、本書に書かれている内容をより分かり易く理解し、実践頂くための講座から設計しています。深く感じる、考える、閃くことを起点に、人材、組織、それを引っ張るリーダーについて学んで頂こうと。それをまずはご自身で実践頂く、あるいは部下の皆さんを育成頂く、組織開発に展開頂けることを目指したものにしたいなと。次の段階では、そこで腹落ちしたことを現場にて実践頂くための、コーチングカリキュラムも導入したいと考えています。EQはその進捗を数値的に測る、客観的指標として活用してゆく予定です。

Q:講座において意識されていることはありますか。
貴志:もちろんリテラシーを習得することは大切です。ただそれらを公式として、当てはめて使うようなものではなく、その本質を理解して活用して頂けるような講座にしたいです。当然インプット、すなわちティーチングすることも必要ですが、すでに様々な経験を積まれた方々を対象としていますので、基本的には、それぞれ自分自身が皆さんの経験と関連付けて、気づきながら学んで頂く。そうすることでより腹落ちするような講座にしたいと考えています。教えるというよりも、皆さんの中にある暗黙知的な知識を、形式知化するようなやり方を取りたいです。

Q:いいですね。難しい面もあると思いますがいかがですか?
貴志:腹落ちして理解、実践で活用できるもの、加えて楽しく学べるものにしたいですね。その方法論としてインストラクショナル・デザインという講座設計の手法があります。目的を明確化して、学ぶ意欲を高めて、具体的にどのように教えるか。そして研修の効果を評価する。これらをモデル化し、体系化されたものなのですが、このガイドラインをできる限り、講座に盛り込みたいと思っています。腹落ち感、実践活用できる、そして楽しく学ぶ。インストラクショナル・デザインはそれを可能にしてくれると考えています。

Q:では、最後に今後のビジョンをお聞かせいただけますか?
村上:当然ながらEQだけで経営を語ることはできません。ある意味、経営は人間そのもの、経営力は人間力と言えるかもしれません。人間力は、知識やケイパビリティ(能力)だけでなく、それに加えて、1つには熱意・誠意・根性・ねばり強さなどの「性格」、1つには自分を律し、他人のため、社会のために行動するという「徳」からなると考えています。そのケイパビリティ、性格、徳、すべてのベースになるのがEQだと考えられますが、性格をどう変容させるのか?いかに徳を積むのか?これらを含めた総合的な教育カリキュラムにしてゆきたいです。経営だけのためではなく、人として成長できるものを目指してゆきたいと思います。
もう1つ、それらのスタートラインは深く感じ、考え、閃く能力。これは経営者になるから向上させるというより、もっと若い時期に、より柔軟性の高い時期に、自我が完成されてゆく時期、おそらく中学生前後の時期から、学んで、向上させるのが良いと考えています。学校教育も進化しつつあるものの、どうしても公式を覚えて使うこともしなければなりません。私としては、若年層に対し、深く感じる、考える、閃くに特化した教育に努めてゆきたいと考えています。


【貴志 俊法の著書はこちらから↓】

『人と組織による実践経営学』

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