シリーズ「EQは、“デザイン”を進化させることができるか」第2回 「傾聴力×直感力×可視化力」が最強のコーチングスキルになる
「EQは”デザイン”を進化させることができるか」第1回記事はこちら
EQ結果の1回目と2回目を比較する
講座は去る7月初旬、レベルフォーデザイン・オフィスで開催されました。受講者は同社の清水啓介社長と3つのグループのリーダーの皆さん。講師は、ジャパンラーニング社長の加来、執行役員の中川とアドバイザーの酒井が務めました。冒頭、加来が、これからの社会でデザインがいかに期待されるか、その可能性にEQがどのように寄与できるかについて熱い想いを語り、続いて中川が講師を引き継ぎ、受講者の皆さんに改めて受験頂いたEQ結果を1回目と比較しながらレクチャーしました。
グループリーダーのひとりWさんは、前回の受験では特に傾聴力のスコアが低く出ていました。ところが、第2回では飛躍的に改善していました。お話を聞くと、「傾聴に関する書籍を何冊か読み、業務でも意識的に努めた」とのこと。
3つの「きく(聴く、聞く、気く)」
2回のスコア比較と振り返りの後は、いよいよ傾聴力講座へ。ビジネス課題が複雑化するいま、リーダーにはティーチング(知識を与える、指導する)スキルに加えてコーチング(相手の能力やモチベーションを引き出し能動的な行動を促す)スキルが必要となり、そこでは傾聴力が必須となることをお伝えし、3つの「きく(聴く、聞く、気く)」について解説。そして、効果的な3つの質問(拡大質問、肯定質問、未来質問)や聴き方のスキル(なぜを繰り返し本質に迫る)等についてのレクチャーを行った後、それを試すロールプレイを行いました。
受講者は2組のペアになり、ひとりが「なぜ、自分には傾聴力が必要だと思うか」について語り、相手はそれに対して問いかけを行います。時間は5分。しかし「なかなか問いが思い浮かばない・・」という声が出ます。
最後のパートは酒井が講師役を引き継ぎ、ワークを行って頂きました。
酒井が読み上げる、EQカレッジのサイトに掲載された某企業の社長のインタビュー記事を聞きながら、その内容を概念図にまとめ、さらにその図を見ながら社長に聞いてみたいことを考えてもらいます。
このワークの意図は、傾聴力とデザイナーならではの「可視化する」スキルを連結させること。
かつてVUCA(変動、不確実、複雑、曖昧)と言われた状況が、新型コロナ、気候変動あるいはウクライナイ情勢などによって一気に拍車がかかり、いよいよ「正解のない時代」に突入するいま。
日々、意思決定を迫られる企業経営者やビジネスリーダーのブレーンとなっているのがデザイナーです。
時代の動きを直感的につかむ能力に加え、経営層の抽象的な思考や言語をその場で可視化することで気づきを促し、エグゼクティブコーチとしての役割を果たしているのかもしれません。
脳は自分のことを話したがる
講座後のアンケートでは、以下のようなコメントがありました。「イメージだけで捉えていた傾聴が、実は論理的で脳科学的な話だということを、よく理解できました」
「自分の伸びしろを感じることができて、ワクワクしました」
「脳は自分のことを話したがるので我慢が必要。主役は相手と認識し聴き役に徹する。どれも大切だと頭ではわかっていても、なかなかできていない自分を自覚した」
デザイナーが持つ直感力や可視化スキルに、言われたことではなく「言わんとすること」を聴き取る傾聴力が加われば、それは最強のコーチとしての可能性を秘めているのではないでしょうか。
しかし、「日常生活レベルにおいても意識的にしないとなかなか身につけられないかもしれない、と感じます」(アンケート回答より)の言葉通り、何よりも相手に興味関心を持ち「どうしたいのか?」「何を目標としたいのか?」を探る日々の実践の反復によって徐々に身についていくものでもあります。
受講者の皆さんは、デザイナーが切り拓く大きな可能性の入り口に立ったのかもしれません。