シリーズ「実践者」に聞く④ EQを、人生に活かしてほしい -ゼオンノース株式会社

会社や組織でどのようにEQが導入・活用されているのか。その実践事例をご紹介する本連載。第4回は、富山県高岡市に本社を置くゼオンノース株式会社です。化学メーカー日本ゼオンのグループ会社の1社として、エンジニアリング、商事、環境分析など特色ある事業展開を進めています。創立50周年を迎え新社屋増設に活気づく同社梅﨑聡社長に、人材育成の取組みやEQ導入についてお話をお聞きしました。
話し手のご紹介

 ゼオンノース株式会社
 代表取締役社長 梅﨑 聡(うめざき さとし)さん
Q: はじめに、梅﨑社長のご経歴についてお話し頂けますか?
梅﨑:はい。1981年に日本ゼオンに入社して、そこから営業、購買、管理など、10以上の部署を経験しました。2018年に日本ゼオンのCSR統括本部長から、子会社であるゼオンノースの専務取締役に就任し、翌2019年の7月より代表取締役社長を務めています。
Q: 日本ゼオンにおられた頃から、ゼオンノースとは関わりがあったのですか?
梅﨑:特に日本ゼオンで資材購買部長をしていた時期、設備や工事、建設案件など、さまざまな取引先さんと工事案件のお話をさせていただく中で、ゼオンノースとも付き合いがありました。グループの中でもかなり重要な位置づけの会社であるという認識をしていました。 その後、関連事業管理部在籍時にも、定期的に訪問などしていました。
Q: 専務、そして社長になられるにあたって、どのようなお気持ちでしたか?
梅﨑:以前から知っていたとはいえ、素材型の日本ゼオンとゼオンノースでは、まったく事業内容が異なりますので、会社として何をしているのか、どんな人がいるのかという理解を改めて始めなければいけない、と考えていました。 社長就任にあたっては、私のように外から来た人間が代表になるということに対して、社員がどんな受け止め方をするだろうか、という不安がありました。何もわかっていないやつがいきなり入ってきて、社長面しているというのは、やっぱり嫌だろうなと思いますので。なによりも約250人の社員、家族も含めて2,000人の生活がかかっていますから、当たり前ですが責任の重さというものをひしひしと感じながら仕事をしています。
Q: 社員のみなさんの雰囲気は、いまどのように感じていらっしゃいますか?
梅﨑:ゼオンノースの社員は、毎日の仕事に対して前向きなメンバーが多いです。手前味噌ですが、昨年実施したエンゲージメントサーベイでは、日本ゼオングループの中で上位のスコアでした。私としては非常に嬉しかった部分ではあるのですが、それは私の功でもなんでもなく、過去からやってきた取組みや、職場の雰囲気、お客様との関係など、一人ひとりが自覚や責任感をもってやってくれているからこそだと思っています。
Q: 素晴らしいですね。社長はどのようなことを心掛けていらっしゃいますか?
梅﨑:私なりのスローガンとして、「社会に信頼・尊敬され、社員が健康で働きがいにあふれる会社」ということを、みなさんに伝えています。 そもそも会社は何のためにあるのか、ということが従来はいわゆる株主資本主義が幅を利かせていましたが、ここに来て大きく見直されてきていると感じます。 私としては、社員が一番大事だと思ってやっていきたいと思っています。毎日会社に来ることが、しんどくなく、今日も頑張るぞという風に思えて、家族や私生活もハッピーに、ということが、会社の在り様としては一番大切かな、と考えています。 ただ、会社である限りは、社会に貢献していなくては存在意義がありませんし、社員も働きがいを見い出せなくなってしまうと思うんです。Z世代やミレニアル世代と言われる若い世代、彼らは会社への帰属意識というよりも、「社会に貢献する」、「環境を大事にする」という価値観をより強く持っていますよね。頼もしいです。ゼオンノースが、社会や環境にどのような貢献ができるのか、ということも意識して伝えるようにしています。
Q: ゼオンノースさんでは、どのような人材育成の取り組みをされていますか?
梅﨑:さまざまな取り組みをしていますが、特に力をいれているのは資格取得の支援です。 ゼオンノースは、工事業が全体の7割以上を占めています。 工事をするために必要な、建設業法上の資格取得、あるいは環境分析の事業でも環境計量士や作業環境測定士など、さまざまな資格が必要になります。これらの資格取得の年次計画を立てていますが、会社として取得支援をしています。また、2年前からは資格給制度も導入しました。資格の取得がしっかりと給与に反映されるようにして、専門技術者を極力増やしていくということに取り組んでいます。

2023年2月、米島事業所敷地内に新社屋が完成した。

 
Q: 人材育成において、感じられている課題はどのようなことですか?
梅﨑:社員は仕事を通じて日々、挑戦しています。試験自体が難しい上に、一定期間の実地経験が必要なものも多く、どうしても長期的な取り組みになっていきます。モチベーションを高めてもらうことを目的に設けた資格給制度は、一定の成果は見られてはいますが、なかなか思ったように取得者が増えない実態もあり、援助内容や金額は適正なのか、定期的な見直しが必要になります。また、これは業界全体にいえることなのですが、建設業は人材の流動化が厳しく、有効求人倍率は6~7倍とかなり高い水準(22年12月時点の全業種平均は1.35倍)です。採用難易度が高いことに加え、大事に育てても他社に流れてしまう、という実態もあります。やはり自分が持っている資格や能力を正しく評価してくれる会社か、そして、その会社が自分の技量を発揮するのに足る魅力のある職場かどうか、を常に判断されている、ということを経営は自覚する必要があると思います。
Q: EQのことは、以前からご存じでしたか?
梅﨑:はい。EQという言葉自体はかなり昔から、知っていました。自分の感性とマッチする部分があり、IQではなくEQが大事だ、というのは思っていました。はじめてジャパンラーニングさんをご紹介いただいたのは、ゼオンノースにきてからですので2019年ですね。会社の先輩から、とても良いからやってみないかと言われたことがきっかけでした。「EQかぁ、久しぶりにこの言葉と出会ったな」と懐かしい気持ちになり、まずはやってみることが大事だと思って、取締役と本部長以上を対象に、測定と研修を受けさせていただきました。
Q: 最初の導入は経営層からだったのですね。
梅﨑:そうですね、そのときに感銘を受けて、翌年は部長級、次の年は女性社員というように対象を広げていきました。半年に1回、測定と研修を実施しています。300問の回答、結構大変なんですけどね(笑)。
Q: EQのどのような部分に魅力を感じて頂けていますか?
梅﨑:エンゲージメントサーベイとは違い、会社として平均何点なのか、ということは一切管理していません。個々人が意義を感じてくれて、自分としてのスコアアップに取り組んでくれることが一番だと思っています。EQを受けることで、自分を客観的に評価できますよね。自分の行動様式やその時々の考え方が結果に表れますので、「思った通りだった」という人もいれば、「思っていた結果と違った」という人もいる。自分の特徴や強み、やりたいことが明らかになって、それを自分なりに心掛けて取り組んで、半年後にまたスコアで振り返る、ということが非常に新鮮な切り口だな、と思っています。
Q: EQ研修も、管理職から一般社員へと対象範囲を広げていただいています。お感じになられていることがありましたら教えてください。
梅﨑:研修の中で、メンバー同士でディスカッションをする、お互いにアドバイスをする、それを素直な気持ちで聞く、といったことで、曖昧に感じていた部分がクリアになります。最近ではコーチングなどもジャパンラーニングの研修に織り込んでいただいていますが、自分を客観的に把握するということは、非常に重要なことだと思います。研修後の参加者の感想文を、私も心掛けて読むようにしているのですが、非常に評判が良いです。自分のことがよくわかったとか、今後こうしていきたいとか、肯定的な感想が多く、とても良かった、是非続けて欲しい、という声が多いことが研修範囲を広げてきた大きな理由です。やはり聞いていて退屈だとか、押し付けられて参加するような研修に意味があるとは思えないですし、受けてよかったなと思う研修がその人にとって一番為になっていると思いますから。
Q: ありがとうございます。とても嬉しいです。最後に、EQや研修を今後どのように業務に活かしてもらいたいかなど、参加者のこれからに期待することをお聞かせください。
梅﨑:研修には、全国の複数拠点から社員が参加しています。いままで会う機会がなかった他拠点の同僚とグループになって話すことに価値がありますし、EQを通して、この人は自分とは違う観点で物事を考えているな、とか同じような仕事をしているけれどもこんな風に考えて仕事をしているのか、というような気づきを得ることができます。一人ひとりの意識や行動が変化して、それが仕事にどう生きてくるのかということは、なかなか半年や1年ではわからないことかもしれません。でも研修を受けた社員たちが、自分はこういう部分が足りていないから、今後こんなことを意識してやっていこうと思って行動をしてくれていることで、悪い方向に行くはずがないと思っています。そして、EQは決して会社だけではなく、仕事以外のこと、自分の家族の問題や人生においても役に立つ考え方ですから、広い範囲で自分を見直す良いチャンスとして生かしてもらいたいと思います。
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