「正解のない時代」越境学習・他流試合で突破せよ。(前編)

主催:立命館東京キャンパス 共催:ジャパンラーニング株式会社
「チェンジ・メイカー育成プログラム第5期 in群馬県嬬恋村」キックオフ!

「チェンジ・メイカー育成プログラム」とは
去る10月6日、「チェンジ・メイカー育成プログラム」第5期がキックオフしました。このプログラムは、経済産業省が2018年から行っていた社会課題を題材としたリカレント教育プログラムの開発・実証事業「未来の教室」を立命館大学が引き継いで、ジャパンラーニングは運営を行っています。


「チェンジ・メイカー」とはどのような人?
「課題の本質を見極め、様々な分野の個人・組織の力を集めて試行錯誤を繰り返し、状況を変化させることできる変革型人材」と定義されます。しかし、それは一部の限られた人のことではありません。
「第四次産業革命」や「SOCIETY5.0」という時代の変化と共に「人生100年時代」が到来し、グローバル化やテクノロジーが更に進展するいま、すべての人に「チェンジ・メイカー」の資質が求められているのです。

今期は、電気通信、自動車部品、IT、コンサルティング、教育機関、生命保険・・・など多様な業種で働く16名の社会人が集いましたが、特徴としては、多くの会社から複数人が参加していること。
本格的に「正解のない時代」に突入したいま、働くひとたちも自社内・自組織に留まっていては思考や発想も限られる・・・という企業の危機感に裏打ちされた越境学習や他流試合へのニーズの高まりを証明しているようです。
受講生は約2か月間をかけて群馬県・嬬恋村を対象地域(フィールド)として実践的な社会課題の解決策を提案することになります。

群馬県嬬恋村
嬬恋村は群馬県の最西端に位置し、約1万人の住民が住んでいます。
嬬恋村ポータルサイトhttps://www.vill.tsumagoi.gunma.jp/www/menu.html

夏の冷涼な気候を活かした高原野菜の栽培が盛んで、夏秋キャベツの生産量は日本一。夏は避暑地として、冬はスキーや温泉に多くの人が訪れる観光リゾートでもあります。また、平成16年11月に村名の由来から「妻というもっとも身近な赤の他人を大切にする人が増えると、世界はもう少し豊かで平和になるかもしれない。」という理想のもと、日本独自の伝統文化かもしれない“愛妻家”というライフスタイルを世界に広めていこうと、同村に発足した「日本愛妻家協会」が中心となって様々なユニークな取り組みを行っています。

16名の受講生は、2か月間、嬬恋村が重要だと考える4つのテーマ「生活(ライフスタイル)」「産業(ニュービジネス)」「教育(ウェルビーイング)」「観光(ツーリズム)」に沿ったグループに分かれ、それぞれ課題に取り組んでいきます。

いよいよキックオフ!
今期の取り組みの大きな特徴は、嬬恋村を活性化するために奮闘されている地域づくり協力隊の皆さんがサポーターを務めてくださっていること。
キックオフは、協力隊の皆さんや運営メンバーの紹介で幕を開けました。
次いで、プログラムの統括コーディネーターを務める立命館大学経営学部の齋藤雅通教授から本講座で学ぶ意味についてのレクチャー。グローバル社会、少子高齢化など、これからの日本社会に訪れる構造変化に対して世代を超えて向き合う必要性が豊富なデータで紹介されると共に、本プログラムの特徴についての説明が行われました。

経験学習サイクル
本プログラムでは、参加者の成長を促進するオリジナルな仕組みとして、経験~省察~概念化~試行という「経験学習サイクル」を高める3つのコンテンツが提供されます。(以下スライド内②)

1つめは、Reflection Method Laboratoryが開発した各回の学びを内省する「リフレクション」。毎回のセッション後、各チームで振り返りを行い相互にコメントすることで、個人の内省を促すと共に協働性を高める狙いがあります。

2つめは、プログラムの前後で学びの自己認識をサポートする「EQ(Emotional Quotient感情的知性)」。受講生は2か月間のプログラムを通して自身の行動と感情を深く理解し、行動を変化させていくことを実践します。また今期は、チーム毎のEQの傾向の分析も行っています。ますます多様なメンバーによる協働の必要性が増すいま、個人だけではなくチームとしての「感情」も理解することも重要になっていくでしょう。

そして3つめは、講座開始前と修了後の2回にわたって実施するキャリア面談です。本プログラムと自業務、自キャリアとの紐づけを、プログラム卒業生であるキャリアコンサルタントが丁寧にサポートします。

齋藤先生に次いでレクチャーを行ってくださったのは、嬬恋村の熊川栄村長。
人口減少や少子高齢化といった課題に直面する中、村が持続可能でより良い未来を迎えるために「村民とは違う視点で提案をしてください!」という本プログラムや受講生への期待を語ってくださいました。

休憩をはさんで、いよいよグループワークのパートへ。プログラムのファシリテーターからの「いま、なぜ越境学習や他流試合を行う必要があるのか」についてのミニ・レクチャーの後、受講生はEQやリフレクションについて、ワークを交えながら学ぶと共に、各グループで4つのテーマについての意見を交換。初日から活発なディスカッションとチームビルディングが行われました。


最初の山場・フィールドワークへ
10月末の週末、受講生はフィールドワークのため嬬恋村に向かいました。予め各チームが設定した第一次仮説の検証を現場で行う、プログラムの最初のクライマックスです。
朝、軽井沢駅に集合しバスで嬬恋村へ。最初の訪問場所は、嬬恋郷土資料館でした。

関俊明館長がまずご案内くださったのが、資料館からほど近い鎌原観音堂。

嬬恋村(旧鎌原村)は、天明3年(1783年)の浅間山の大噴火の時、483名が亡くなる(群馬県下で1400名)という悲劇に見舞われましたが、観音堂に避難した93人だけが助かりました。
震災遺構で村の歴史を体感した後は、資料館で「嬬恋村文化財保存活用地域計画」をもとに、館長が村の記憶を遺すビジョンについて丁寧に解き明かしてくださいました。

続いて向かった村役場では、観光と教育のテーマ毎にグループが分かれ、受講生と役場の皆さんとの熱のこもったディスカッションが行われました。

日が傾き始めた頃に向かったのは、愛妻の村のシンボル的なスポット「愛妻の丘」。周囲をキャベツ畑に囲まれ、雄大な浅間山を望むこの場所で毎年9月に開催されるイベント「キャベツ畑の中心で妻に愛を叫ぶ(通称:キャベチュー)」は、いまや嬬恋村から全国に「〇〇の中心で妻に愛を叫ぶ」として広がっているのです。
愛妻の丘https://tsumatabi.com/spot/spot_7/

そして、初日最後のプログラムは村でクラフトビールを生産する嬬恋高原ブルワリーでの懇親会。ここでは、村でユニークな取り組みをしている「キャベツーリズム研究会」の皆さんが集結してくださいました。
本プログラムでは、その地域の要となる人との連携が成否のカギを握ります。今期、その「キーマン」と言えるのが、研究会の皆さんとの出会いをコーディネートくださった、一般社団法人風街浪漫舎代表の洲崎賢治さん。デザイナーとして村のPRに携わる中、総合計画を村民を巻き込んで具現化する活動や、2019年の台風被害を受けての「嬬恋晴レルヤプロジェクト」などを手掛けられ、いまや村にはなくてはならない存在です。
美味しいビールを飲みながらの研究会の皆さんとの対話は、受講生にとって机上のデータでは到底得られない「生きた情報の宝庫」に感じられたに違いありません。


フィールドワーク2日目

フィールドワーク2日目は、観光案内所への訪問と、嬬恋高校に場所を移しての観光と教育についてのレクチャーからスタート。
観光パートでは、フィールドワークにも帯同くださった地域おこし協力隊メンバーで観光協会に所属されている櫻井宏樹さんが、嬬恋観光ビジョンについてご説明頂くと共に「住民を巻き込んで、みんなでもっともっと観光を盛り上げたい」という想いを語ってくださいました。教育パートでお話しくださった嬬恋高校の星野鉄平先生は、同高校のユニークな取り組みをご紹介くださいました。

生徒数が減少する中、地域おこし協力隊と連携し地域の歴史や資源への探求を行う「地域連携探求活動」や県内のつながりを活かした「ぐんまハイスクール・ネットワーク構想」そして教師がYoutuberとなって学校の活動を発信する「つまチャン(嬬恋高校公式Youtubeチャンネル)」など、様々なチャレンジが行われています。
つまチャン【嬬恋高校】Youtubehttps://www.youtube.com/@–TSUMAchan


フィールドワークの最後のパートは、2020年にオープンした農産物等直売所「あさまのいぶき」と嬬恋村と、軽井沢との境界に位置する総合レジャー施設・浅間ハイランドパーク。「あさまのいぶき」では、同施設の経営を担い、村民なら誰もが知るスーパーマーケット「卸売センター サンエイ」の代表取締役社長でもある渋沢栄一さんが、嬬恋の基幹産業である農産物をさらに進化させるご自身の取り組みについて、ハイランドパークでは、コロナ禍を受けて設置したテレワークスペースの活用状況などをご説明頂きました。


あまりにも濃密な2日間の行程を終え軽井沢駅へと向かうバスの中では、「チェックイン」として、受講生一人ひとりが2日間で感じたことを一言コメント。誰もが、事前に建立てた仮説とのギャップに戸惑いながら、都会では得られない新鮮な空気や地域を盛り上げようとする人たちからのエネルギーをもらい提案への意欲を語ってくれました。
また、このフィールドワークでは、講座の中で観光マーケティングのレクチャーも行っている立命館大学経営学部の石崎祥之教授も同行。観光を考える上で大切な「鳥の眼(地域全体を俯瞰する)、トンボの眼(地域の歴史の流れを知る)、蟻の眼(そこに住む人たちに目を向ける)」という3つの視点の提供をしてくださいました。


本プログラムの成果提案会は11月24日に嬬恋村役場で開催。
ライブ配信も行いますので、お楽しみに!(つづく)

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